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ディレクター・デザイナーのための、撮影ディレクション丸わかりガイド

ディレクター・デザイナーのための、撮影ディレクション丸わかりガイド

こんにちは。ディレクターの佐藤です。

ビーワークスでは、商品撮影からモデルの撮影、食品の撮影、はたまた空撮まで、様々な撮影を伴うプロジェクトを担当しています!
私も撮影のディレクションを担当することがありますが、最初に担当した時は、必要な事前準備の多さや考えておくべきことの広さに驚きました…。

準備が足りないと、撮影当日にあたふたして、想定以上に時間がかかってしまい予算もオーバー…なんてことにもなりかねません。
良いクリエイティブをつくるためには、素材となる写真や動画の撮影ディレクションはとても重要。
撮影はスムーズに段取りよく進行して、肝心のクリエイティブチェックに時間をかけたいものです。

そのためには事前準備を抜け漏れなくやっておくのが大事!
ということで、撮影の工程をまとめてみました。

この記事では撮影の工程を最初から最後まで説明します!
最後には撮影工程一覧表も用意していますので、撮影のフローの見直しにご活用ください。

撮影案件のフローを見てみよう!

撮影現場において、ディレクターやデザイナーが行うのは、進行管理だけではありません。
カメラマンやスタイリストとコミュニケーションを取って指示をしたり、クライアントに説明・確認をするという、「撮影をスムーズに進めつつ、良いものを撮る」ための重要な役割を担います。

当日になって「これがない!」「アレやってなかった!」とあたふたして、撮影はカメラマンにお任せになってしまった・・・なんてことにならないよう、撮影全体のフローを把握した上で、抜け漏れがないように準備を進めていきましょう。

一覧

目次

  1. 撮影内容をヒアリング・提案する
  2. ここが重要!撮影準備
  3. いざ、撮影!
  4. 撮影後の制作
  5. 撮影工程一覧表ダウンロード

1. 撮影内容をヒアリング・提案する

1_ヒアリング
撮影の依頼をいただいたら、まずはどんな写真をとりたいのか、どこで使いたいのかなどを確認します。
クライアントの要望を踏まえて、撮影手法や撮影内容を提案します。

オリエン/ヒアリング

ヒアリングのポイントは、

  • 撮影の目的は?
  • ターゲットは誰か
  • どんな写真を撮りたいのか(モデルを使うのか、商品のみか、など)
  • 写真のテイストは?(テイストの違ういくつかのサンプルを用意すると話がしやすい)
  • 写真の使用条件(使用する媒体や掲出場所、使用期間など)
  • NG事項はあるか?(一緒に写してはいけないもの、商品のタグやシールは取ってOKか?など)
  • カット数は決まっているか
  • 予算
  • 納期

など。
なるべく最初に情報を引き出せるのがベストですが、あれ聞き忘れたな、というものが出てきたら、後からでも聞いたほうがよいと思います!

写真の使用条件は、費用やスケジュールに大きく関わってくることなので事前に必ず確認しましょう。
例えば、紙媒体の場合、発行部数によって金額が変わる場合もあります。
ポスターなど大きく使われる写真の場合は、レタッチの精度が求められ、作業期間が変わってきたりします。
逆に、デジタルメディアのみの使用であれば、そこまで細かくレタッチをしなくても十分な場合もあります。

ワークフロー検討・スケジュール作成

撮影までのフローを確認、検討して、スケジュールを作成します。
初めて撮影を行うクライアントの場合、スケジュールを提出する際に、撮影のフローの説明もしておきましょう。
また、クライアントもロケハン(撮影の下見)に同行したい!ということもあるかもしれません。
クライアントが何を確認したいか、また、撮影内容や撮った写真の決定は誰がするのかなども確認し、想定から変更があればスケジュールを見直します。

提案資料

オリエンでヒアリングした内容をもとに提案資料を作成します。
案件内容によって必要な資料が変わってはきますが、だいたい以下のようなものが必要になります。

構成案

冊子であれば台割り、WEBならワイヤーフレームなどの資料で、写真をどこでどのように使うのかを示します。

提案用の撮ラフ

想定する撮影の内容がわかるラフ(レイアウト案のようなもの)を作成します。
手書きで作成することも、写真を合成して作成することもあります。
複雑な撮影の場合は3Dでコンテを起こしたりもします。

イメージ写真

ライティングのイメージや、モデルのポーズなどの参考画像もあるとよいでしょう。

また、レンタルフォトに合成することを前提にして、商品を撮影する場合もあります。
このような場合には、事前にレンタルフォトの候補のピックアップや、権利関係の確認も行っておくとよいでしょう。

協力会社のアサイン

並行して、カメラマンやスタイリスト、ヘアメイクなどに撮影の内容を伝えて打診します。
モデルが必要な場合には、モデル事務所やキャスティング会社に依頼します。
他社の案件に出演しているモデルは、競合NGという場合もありますが、モデル事務所やキャスティング会社にお願いするとそのあたりも考慮していただけます。

また、モデルにはいろいろなカテゴリがあります。
カメラマンやスタイリストも、得意な分野がそれぞれ異なりますので、撮影の内容に合わせてアサインするようにしましょう。
また、フードスタイリストがテーブルコーディネートもやってくれたりと、幅広く対応できる方もいるのでアサイン時に対応可能な範囲を聞いてみるとよいでしょう。
categori

撮影場所選定

撮影場所は主に、ホリゾント(通称ホリ)のスタジオ、ハウススタジオ、外でのロケーション撮影があります。
何をどう撮りたいかによって、適切な撮影場所も異なりますので、それぞれの特徴を押さえておきましょう!
スタジオ

ホリゾントスタジオ

ホリゾントのスタジオでは、切り抜き用写真の撮影や、無地の背景(白・グレー・黒あたりが多い)を生かした写真や動画を撮ることができます。
ハウススタジオや外での撮影だと、光は天気や太陽光の向きにも左右されますが、白ホリでは光の方向や強さを好きなようにでき、影をはっきりさせたり、ぼやかしたり、グラデーションをつけたりと、自由にライティングができるのも特長です。

ハウススタジオ

ハウススタジオは、インテリアが備え付けられた一軒家やマンションの一室などで撮影ができるスタジオです。
リビングやキッチン、ベッドルーム、庭などのシチュエーションで撮影ができます。
欲しいシチュエーションに合わせたセットを作るとなると、時間も費用もかかりますが、イメージにぴったりのハウススタジオがあればそのあたりの手間を削減できるというのが一番のメリットです。

スタジオは基本的に時間貸し、もしくは1日貸しのところが多いです。
時間貸しの場合は、準備や片付けなども含めた時間になるので、余裕をもったスケジュールを立てておきましょう。
(柔軟に対応いただけるところも多いので、不安があれば事前に確認しておくとよいと思います。)

ロケーション撮影

ロケーション撮影とは、スタジオ内のセットではなく、実在の建物や風景などで撮影することです。
ロケの場合は、自然光で撮ることになるので、撮影する時間帯(朝なのか、夕方なのかなど)も明確にしておき、実際に撮影する時間帯にロケハンに行って、光の向きや人通りの多さなどを確認しておくとよいでしょう。

撮影場所の許可取りをしたり、関係者の駐車場を確保したり・・・とやることは多いですが、スタジオより現実に近いシチュエーションで、自然で臨場感のある撮影をすることができます。
また、当日の天気が悪い場合を考え、予備日を設定しておくことも重要です。

ロケハン

撮影を行う場所を探したり、下見を行うことをロケハン(ロケーション・ハンティング)と言います。
(スタジオの下見もロケハンという言葉を使うことが多いです。)
撮影場所の全体や詳細がわかるような写真を撮っておきましょう。
また、事前に撮影したい場所の目処が立っていれば、実際の撮影に近いアングルで写真を撮っておくとよい検討材料になります。
撮影で大型の商品や機材を持ち込む場合には、搬入口のサイズやエレベーターの有無なども合わせて確認し、それも含めて撮影場所の候補を出しましょう。

2.ここが重要!撮影準備

2_準備
撮影の内容が決まったら、次は撮影準備。
当日の撮影がスムーズに進むかは、この撮影準備にかかっていると言っても過言ではありません!
実際の撮影を想定して抜け漏れがないように準備をしましょう。

契約関連

撮影内容に沿って、必要な見積りや契約も行いましょう。
・見積もり(スコープを明確にしておきましょう。)
・撮影許可書(ロケの場合、自分たちで許可取りをする場合も、協力会社にお願いすることもあります。)
・二次利用の有無、条件など(クライアントの要望を踏まえて、カメラマンやモデルと調整を行います。)
・保険(高所でのロケの場合など、モデルやスタッフの保険が必要な場合もあります。)

撮影資料用意

香盤表

香盤とは、もとは歌舞伎などで出演する俳優の名前と役を場面ごとに書いた表、という意味だそうです。
香盤表は、撮影する順に、撮影カット名、撮影場所、登場人物や必要な小物、所要時間などを細かく記載したスケジュール表のようなものです。
撮影の効率や手順を決める、とても重要な資料になります!
どの順序で撮影するのがいいかは、カメラマンやスタイリストにも相談してアドバイスをもらうとよいかもしれません。
香盤表サンプルをダウンロード
香盤表

撮ラフ(最終版)

提案時の撮ラフから、ロケハン時に撮影した写真などを使って、より実際の撮影内容に近い状態にしたものを用意します。
ほかにも、小物を実際にセッティングするとおりに配置したイラストを作ったり、実際に撮影する商品を使って事前に試し撮りした写真を撮ラフにすることも。
写真のレイアウトだけでなく、ライティングの詳細を書いておいたりする場合もあります。
当日のセッティングは、この資料をもとに行うので、これもとても重要な資料になります。
撮ラフ

デザインカンプ

例えば、冊子の表紙用で文字が載ってくる写真などは、撮影した写真のレイアウトが問題ないか確認できるよう、デザインカンプを作成しておくこともあります。
完成までに、乗せる要素が多少変わってくる可能性もあるので、トリミングが調整できるように引き気味の画角で撮っておくのもよいと思います。
カンプ

案内状(送り状)

旅行のしおりのように、集合時間・場所、スタジオ・駐車場の地図や住所、ディレクターやスタジオの連絡先など、撮影にまつわる情報をまとめた資料です。
撮影の一週間〜数日前までに、クライアントや協力会社に送っておきます。
合わせて、撮影立会いの人数も最終確認しておくとよいでしょう。
案内状サンプルをダウンロード
送り状

商品、プロップ(小物)の手配

撮影に使う商品と、商品以外の小物を用意します。

商品は自分たちで用意する場合と、クライアントが用意する場合などがあります。
商品以外の小物は、購入、レンタルする、スタジオに用意されているもの使う場合などがあります。

何が必要か、撮ラフや香盤表をもとに洗い出して手配しましょう。

商品や小物は、できれば前日にスタジオに配送しておくと当日の進行がスムーズになります。
スタジオによっては前日の受け取りが不可能な場合もありますので、これも事前に確認しておくとよいでしょう。

PPM

PPMとはプリプロダクションミーティングのこと。(撮打ちという言い方をすることも。)
撮影内容の全体を確認する打ち合わせで、実際の撮影内容や当日の進行を撮影資料で確認します。

・撮影するカット数の確認
・それぞれのカットの内容確認(撮影シーン、モデルのポーズ、小物は何を入れるか、合成用カットの抜け漏れがないか、など)
・当日の集合時間・場所の確認
・撮影手順の確認(香盤表をもとに擦り合わせ)
・撮影後の製作スケジュール

などなど。

撮影後にレタッチを行う場合は、合成用のカットに抜け漏れがないかも、忘れずに確認しておくようにしましょう。
合成は例えば以下のような場合があります。
・風景と人物を撮る場合…人物用のライティングと風景用のライティングで分けて撮影し、後から合成する
・化粧品や時計など、パーツごとにライティングを変えたり、色を厳密に表現したいものは、パーツごとに撮影して後から合成する
1枚でもカットが足りないと再撮影が必要になる場合がありますので、注意しましょう。

3.いざ、撮影!

3_撮影

撮影前の準備

現状復帰用の撮影

ハウススタジオやロケ撮影の場合、撮影が終了したらもとの状態に戻すのがマナーです。
元々置かれているものを移動した場合にもとに戻せるよう、最初の状態を撮影しておくようにしましょう。

機材のセッティング

撮影用の機材のセッティングを行います。
基本的にカメラマン、アシスタントの方が行いますので、ディレクターやデザイナーは、並行してスタイリングの確認をしたり、クライアントへの説明をしたりします。

スタイリング

スタイリストが撮影用に小物をセッティングしていきます。
一通りセッティングし終わったあとに、ディレクターやデザイナーがチェックして調整します。
そのあとクライアントにも商品の置き方、見え方などの確認を取るとよいでしょう。

その他

お昼を挟む撮影の場合は、お昼ご飯も手配しましょう。これが意外と忘れがちなので注意!
また、休憩用の飲み物やお菓子なども、用意しておくと喜ばれるでしょう。
(スタジオにケータリングのチラシなどが置いてある場合も多いです。事前にお願いすればスタジオ側で手配いただけることも!)
ほか、BGMをながしてリラックスできる雰囲気にしてもよいでしょう。

撮影中

準備が整ったらついに撮影が始まります!

カメラマンやディレクターによってやり方はいろいろあると思いますが、
こんなやり方をすることが多いよ!というのをご紹介します。

テスト撮影

スタイリングやセッティングが終わったら、まずはテスト撮影!
カメラマンが明るさやホワイトバランスなどを変えたりしつつ、バシバシっと撮ってくれます。
この段階でも要望があればカメラマンに伝えて調整をお願いしましょう。

撮影内容のチェック

まずはテスト撮影したものでクライアントに確認してもらいます。
撮った写真を一緒に見ながら、ここはもうちょっと見せたいな〜とか、もっと明るくしたいな〜といった要望を聞いて、その場で調整すべきか、あとからレタッチで修正するか、などを話し合います。

また、想定していたアングルよりこっちのほうがよい!と、現場で新しいアイデアが生まれることも多々あります。
撮ラフ通りじゃないと!と硬くならずに、クライアントと相談しつつ、その場のベストな方法を選択できるとよいですね。
準備が重要というのも確かですが、撮影現場こそディレクターやデザイナーのクリエイティブの発揮しどころで、こういう生モノ感があるのが撮影の楽しいところだと思います!

タイムキープ

昼間のシーンを想定していたのに暗くなってきてしまった…ということにならないよう、想定より時間がかかってしまったら、先に用意しておけることはないか考えて指示を出したり、「ちょっと時間押してるので巻きでいきましょう!」とカメラマンやスタッフに声をかけたりします。
時間が押してしまったら明るさに関係のないカットを後回しにする、など、香盤の調整も必要になってきます。
(先にも書いたように、スタジオは時間貸しのところが多いので、想定時間より長くなると料金もさらにかかってきてしまいますので注意しましょう。)

片付け

撮影が終わったら、最後の後片付け!
最初に撮った写真をもとに、現状復帰をしましょう。
また、クライアントには、撮影が終わったらお先に帰っていただくほうがよいでしょう。

4.撮影後の制作

4_制作

レタッチ

撮影時に「レタッチで修正しましょう」と決めておいた内容を修正します。
レタッチする内容も写真により様々ですが、一例を挙げておきます。

・撮影時にうまく出なかった色味の調整(ライトの色がうまく出なかったりします)
・肌をきれいに!
・瞳の映り込みを補正する
・色をもっと鮮やかに!
・製品についているシールを消す
・キズを消す
・電線を消す

…などなど。

カメラマンに対応いただける場合もありますが、
大掛かりなレタッチはレタッチャーにお願いするほうがよいでしょう。
(ビーワークスは社内にレタッチャーがいるので、社内で対応することも多いです。)

デザイン制作

撮影データが到着したら、レタッチ前の写真で並行してデザインを進めておき、
あとからレタッチ後の写真に差し替えることが多いです。

色校正

ちょっと撮影から話が逸れますが、紙媒体の場合は、写真が希望通りの色で印刷されているかのチェックも重要です。
色校正でしっかり確認するようにしましょう。

忙しい人のための撮影工程一覧表

今までの工程をまとめた一覧表を用意しました。
これを見れば撮影案件がまるわかり!

撮影工程表をダウンロード
撮影工程表
工程ごとに気をつけるポイントなども書いてありますので、ぜひご活用ください。
撮影はなるべくスムーズにすすめて、写真のクリエイティブにパワーをかけられるようにしたいですね。

ここまでお読みいただきありがとうございました!
ビーワークスでは、商品撮影からモデルの撮影、食品の撮影、はたまた空撮まで、様々な撮影を伴うプロジェクトを担当しています。
実績などにご興味があればこちらからお問い合わせください

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この記事を書いたメンバー

佐藤 ゆり奈 ディレクター

東京生まれ、茨城育ち。キャンプと漫画とくだらない笑いが大好きです。
今まではなんでも自分でやりたい派でしたが、最近はチームの成長を一番に考えてます。

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