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【CI】コーポレート・アイデンティティの基本要素とツールリニューアルの話

【CI】コーポレート・アイデンティティの基本要素とツールリニューアルの話

※この記事は2015年1月13日に執筆された記事です。


こんにちは、デザイナーのタカハマです。事務所移転をきっかけに弊社のCIツールをリニューアルしましたので、その制作プロセスをご紹介したいと思います。デザイナーの方や自社のCIリニューアルを考えている方の少しでもお役に立てれば幸いです。


デザイン・システムの要素

CI(=コーポレート・アイデンティティ)と聞くと「ロゴタイプ」「ロゴマーク」「コーポレートカラー」などをまず考えると思いますが、CIに含まれる要素は幅広く専門家の中でも定義に差があるようです。およそ次のようなものがCIを構成するデザイン・システムの要素とされています。
※「コーポレートアイデンティティ戦略(中西元男 著)」の分類を元に記載させて頂きます。

デザイン・システムの基本要素となる
「ベーシック・デザイン」

  1. コーポレート・シンボル(視覚的コミュニケーションの基本。マーク、シンボル、ロゴタイプ)
  2. 社名ロゴタイプ(正式和文社名と正式英文社名のロゴタイプ)
  3. 専用タイプフェイス(広告やマニュアルなどで使用する書体の規定)
  4. コーポレート・カラー(企業を象徴するイメージカラー)
  5. コーポレート・ステートメント(企業の理念や思想の言葉)
  6. サブグラフィック・エレメント(コーポレート・シンボルを補完する図形)
  7. トレードキャラクター(企業イメージを補強するためのキャラクター)

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ベーシックデザインを展開した
「アプリケーション・デザイン」

  1. ステーショナリー・ビジネスフォーム(名刺・封筒・便箋などの事務用品)
  2. 製品(製品デザイン・ネーミング・ロゴのマーキング)
  3. パッケージ(製品を保護するパッケージ)
  4. サイン(パネル・広告看板・標識・案内表示など)
  5. 環境・店舗(オフィス・工場など施設の内外観のイメージ)
  6. 輸送用機器(営業車両・輸送車両・船舶・航空機など)
  7. 広告・広報(会社案内・プレスリリース・商品カタログ・ノベルティなど)
  8. ウェブサイト(公式ページ、ブランドページ、採用ページなど)
  9. ユニフォーム(服・帽子・腕章・名札・ワッペンなど)

今回のCIリニューアルでは「ベーシック・デザイン」については大きな変更は加えず、「アプリケーション・デザイン」の主に「(1)ステーショナリー・ビジネスフォーム」の刷新を計りました。(会社案内・手さげ袋・封筒・名刺)

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本社移転のためツール類の住所を刷り直す必要もありましたが、創業から13年が経過して、ビーワークスの仕事内容も変化し続けているため、CIツール類もそれに合わせてフィットさせたいタイミングでした。


開発プロセス

1.プロジェクトメンバーの招集

トップダウン型の組織であれば、経営トップが音頭をとるべきかもしれませんし、ボトムアップ型の組織であれば若いメンバーが主体的に動くのが理想かもしれません。
我々の場合は中間層のメンバーがプロジェクトの中心となりました。

今回の役割 普段の役割
プロジェクトマネージャー 経営部門 人事担当者 シニアディレクター(社内報編集長)
アートディレクター 出版部門 アートディレクター兼マネージャー
クリエイティブディレクター デジタル部門 アートディレクター兼マネージャー
制作ディレクター 企画広告部門 ディレクター(元営業)

所属部門が違うメンバーで構成することで、少ない人数ながらも会社の全体像を素早く捉えながらプロジェクトを進めることができます。
CIリニューアルは会社の歴史・文化を理解した上で会社の未来を改めて考える作業になるため、比較的若めのリーダー層がこのようなプロジェクトに関わっていくことは組織運営の観点でも意味があることだと思います。

2.現状の調査と分析

次のような項目で現状の調査と分析を行いました。

  • 既存のCI理解(デザイン・システム)
  • 会社の歴史や業容の変化
  • 社風や従業員が抱く会社イメージ
  • 既存ツールのラインナップと開発時期
  • 過去に行ったリニューアルの経緯と内容
  • ツール使用者の声
  • 価格と使用量
  • 他社ツール

調査では人事や広報といった経営部門の担当者がプロジェクトメンバーに入ることも重要です。
今回(弊社)の場合、日常的に行っている採用活動や社内報編集を通して多くの従業員と関わるメンバーが入ったため、各部署に顔が利き、必要な情報もすぐに集めることができました。
また、外部の人間に対して自社を説明する機会も多いため、客観的に会社の姿を捉えることも得意です。

3.コンセプト設計

分析内容をもとに次の項目でコンセプトを決めていきました。

  • 与えたい印象
  • デザイン
  • ラインナップの整理
  • 機能性の向上
  • コストダウン

与えたい印象については、創業時は大手出版社とのDTPをメイン事業としていましたが、今では多くの出版物のアートディレクションを行い、ゲーム・Web・販促と他の分野でも上流工程から関わることがメインとなりました。「若さや・親しみ・対応力」といった元気な印象から「プロフェッショナル」としての信頼感を強める必要もでてきました。

デザインについてですが、ツールのラインナップ感を高めるものとして「蜂蜜の溢れる様子をモチーフにしたサブグラフィック・エレメント」を追加しました。使用書体を選定し、色の使用面積もグラフィック部分と文字部分とでそれぞれ定めていきます。

ラインナップ整理として使用頻度の低い封筒サイズを廃止して、新たに会社案内用のファイルを追加しました。

機能性については、封筒においては糊付面積を減らすためにフラップ位置を短辺で統一、種類によっては封入物が透けない加工を施しました。手さげ袋では使用者の声からもひもや紙の素材を変更し強度を高めました。

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上記リニューアルを施しながらも、使用素材や加工方法の取捨選択を行いコストダウンできないか調整します。毎日使用するものですので、コストダウンも重要なデザイン要素となります。ビーワークスではオレンジ2色が基本使用となりますが、特色の使用をプライマリー1色に絞ることでコストダウンをはかりました。特色のプライマリーはとても印刷映えするカラーです。(コーポレートサイトではRGBでの視認性を考慮してセカンダリーをメインカラーとしています。)

4.モックアップ制作

コンセプトが固まったら、モックアップを制作しました。
モックアップについては完成度を高める事よりも、素早くイメージを共有できる状態にする事の方が重要です。
印刷したものを折ったり、切り貼りしながらイメージを固めていきます。

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折り込みでサブグラフィック・エレメントを表現しようとしましたが、実際に紙の厚みを目にすると印刷で表現した方がよい、などモックアップを作ることで初めてわかる部分もあり、アイデアもより具体的なものになっていきます。

5.経営判断(取締役会議)

経営陣に対してプロジェクトメンバーからプレゼンを行います。
社内プロジェクトの場合、普段からよく見知った相手へのプレゼントとなりますが、軽い提案にならないようクライアントワーク同様にきっちりプレゼンを行うことが大切だと思います。
プレゼンの場はお互いに意見交換を重ねることで会社に対する各々の考えを知るよい機会ともなります。
とはいえ、様々な意見の折衷案になるとモノとしては弱くなるため、最終的には経営トップの判断に任せる事が望ましいです。

6.ブラッシュアップ

気になる部分や細かいニュアンスを調整して、経営トップが納得できる形に仕上げます。
プロジェクトメンバーとしては初回に提案した形がベストだと考えがちですが、経営トップとともにブラッシュアップしたものの方が会社を体現しているということがこの過程を通して自然と理解できます。

7.運用ルールの整備と共有

CIツールは従業員全員が使うことで機能するものであり、運用ルールの整備と共有も必要な工程になります。
はじめは変化に対して戸惑いの反応の方が多いことが予想されます。
ただ、ツールの変化に対して興味を持った従業員がポジティブ・ネガティブ問わず意見を持つ事は、各々のレイヤーで自社に対して考える機会ができたことになります。
全従業員が自らの立場で会社をどのようにしたいかを考えられる組織は世の中の変化にも強い組織になると思います。
そういう機会や風土を生み出すためにもCIを見つめ直すという行為は重要なのかもしれません。


おすすめしたいCI書籍

PAOSグループ代表 CI戦略コンサルタントの第一人者である中西元男氏の著書です。
デザイナーが作ったものを世に出す意思決定者はメーカートップであることに気づいた筆者が「企業経営者に分かるデザイン理論をつくり、採用されるデザイン手法を開発することも重要なデザインの仕事である」という考えのもと、企業経営とデザインの関わりの成果を調査・実験・実践しながら開発したCI戦略手法をまとめた書籍になります。
今の日本を代表する企業がCI戦略により、どのように成果をあげていったのかが実際のエピソードとともに紹介されています。
デザイナーに限らず、企業経営にデザインの力を求めている方にぜひオススメしたいCI書籍です。


まとめ

今回の事例は200名規模のデザイン会社でCIを部分的にリニューアルしたという小さな一例です。
会社規模やCIのリニューアル範囲が違えば、体制・手法・期間・費用などケタ違いに大変なものとなりますし、クライアントワークであれば外部パートナーとして関わるために開発プロセスも大きく変わり、今回の事例で参考になる部分は少ないかもしれません。
とはいえ、自社や他社のCIについて考えるということは、デザイナーが経営について考えを巡らせるよい材料となります。ビジネスを加速できるデザイナーになるためにも世の中のCIの変化については注目していきたいものです。

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この記事を書いたメンバー

タカハマ ケンタ デザイナー/アートディレクター/マネージャー

デザインの面白さを分かりやすく伝えることをテーマとしています。
趣味はドライブとツーリングと買い物。
本気の買い物は仕事に役立つという信念で散財を楽しんでいます。

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